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【LET blog 第250号】 (2025年11月10日)
カテゴリー: LET Blog Archives
投稿者: つらい編集長つらい
【LET blog 第250号】
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みなさん、こんにちは。
寒暖差の激しい日が続いておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
今月号の支部企画は、中部支部からの「初中級英語学習者の英作文執筆における生成AIの使用実態:共存に向けた課題と解決策」です。
それでは、今月号の blog をどうぞご覧ください。
□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 第250号のもくじ
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■ 第64回 (2025) 年次研究大会
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■ 支部企画
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 支部研究大会・支部総会情報
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□ 関東支部
■ LET関東支部第153回(2025年秋季)研究大会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 支部研究部会情報
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□ 関西支部
■ 中高授業研究部会 12月例会
■ 早期英語教育研究部会 2025年度 第4回例会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 研究員・研究者・教員公募
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【LET blog 第250号】(続き)
http://j-let.org/~wordpress/index.php?itemid=1846#more
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【LET blog 第250号】
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■ 第64回 (2025) 年次研究大会
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2025年度 外国語メディア学会(LET64)は、下記の日程で開催します。
(改めて、例年とは開催時期が異なりますのでご注意ください。)
現在、参加申込を受け付けております。ぜひ奮ってご参加くださいませ。
日時・会場:
2025年11月22日(土)・23日(日)
関西大学千里山キャンパス100周年記念会館
大会テーマ:
言語教育とテクノロジーの新しい波を乗りこなす
(Surfing the New Big Wave in Language Education and Technology)
公式サイト:
https://www.j-let.org/let2025/
大会の告知にご協力のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
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■ 支部企画
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□ 中部支部:「初中級英語学習者の英作文執筆における生成AIの使用実態:共存に向けた課題と解決策」
(三上 綾介,愛知学院大学)
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2022年末に公開されたChatGPTは、世界中のさまざまな分野に大きな変革をもたらしました。生成AIは、入力内容(プロンプト)によって出力が大きく異なるため、「プロンプトエンジニア」と呼ばれる職業が登場するなど、使いこなすスキルが新たな専門性として注目されています。実際、一般企業においても、新入社員に求めるスキルの一つとして「生成AIの活用能力」を挙げる例が増えてきているようです。英語教育も例外ではなく、教育における一種のパラダイムシフトが起きたと言っても過言ではありません。言語指導における生成AIの活用法を探る研究や、近年では学習者の情緒面への影響を調査する研究も見られるようになってきました。こうした流れの中で、教員が学習者による生成AIの使用を一律に制限するのではなく、むしろその活用法を正しく教授し、学習に効果的に取り入れる支援を行うことの重要性が高まっています。本稿では、筆者が2024年4月から2025年7月にかけて担当した初中級英語学習者による英作文執筆の授業において、生成AIがどのように使用されていたのか、その実態を報告するとともに、教育現場での共存に向けた課題とその解決策について考察してみたいと思います。
授業は2回で1セットの構成で進めました。2024年度は1年で12セット、2025年度は半年で6セットの授業を実施しました。各セットでは「議論」や「説明」など、特定のテーマに基づいた英作文の執筆を行いました。前半回では、それぞれのテーマに応じて必要な語彙・文法といった表現や構成の工夫、英語での論理展開の方法などを学ぶ時間とし、英作文に必要な準備時間としました。後半回では、実際の英作文執筆を中心に活動を進めました。まず20〜30分程度のプランニングの時間を設け、どのような内容を書くかを整理した上で、さらに20〜30分ほどかけて実際に英作文を執筆しました。今回の授業では、生成AIとの「共存」の可能性を探るために、可能な限り自由な使用実態を把握したいという意図がありました。そのため、AI使用に関しては以下のような最低限のルールのみを設けました。
1. 言いたい単語や文法が分からない場合に、対応する英語表現を断片的に調べることは可とする
2. 1文まるごとを翻訳させるような使い方は禁止する
まず学生側の課題として明らかになったのは、生成AIの使用に対する倫理観や姿勢のばらつきです。ほとんど、あるいは全く生成AIを使用せずに英作文を執筆していた学生も見受けられた一方で、多くの文を生成AIに依存して執筆していたと見られる学生も見受けられました。後者の例としては、1文に数十語を含み、関係詞や分詞構文を多用した非常に複雑性の高い英作文を提出する学生も見られました。次に教員側の課題として、特に評価の難しさが挙げられます。生成AIを用いて書かれた英作文は、語彙や文法のエラーがあらかじめ修正されているケースが多く、学習者の実力を正確に把握することが困難になります。もちろん、英作文の評価は言語面だけでなく、構成の論理性や内容の適切さ(主張と支持文の整合性など)といった側面にも焦点を当てる必要があります。しかし、語彙や文法面に対する具体的なフィードバックが難しくなることにより、従来の教育的介入の在り方を見直す必要が出てきました。
こうした課題を踏まえ、生成AIと英語教育がどのように「共存」できるかについて、実践的な解決策を考えてみたいと思います。今回の授業では、使用実態の把握と試行的な意味も込めて、英作文の執筆中(いわゆるオンラインでの執筆プロセス)における生成AIの使用を許可しました。しかし、使用の程度や方法にばらつきが見られたことから、執筆プロセスにおけるAI利用の制御や評価は依然として難しいという課題が残りました。そこで一つの有効な方策として、執筆中の使用自体は制限し、代わりに「執筆後」に生成AIを用いて自己の文章に対するフィードバックを得る形へとシフトすることが考えられます。その上で、学習者自身がAIから得たフィードバックに対してどのような気づきを得たか、何を修正し、なぜそのように判断したかといった振り返りを重視し、評価の対象に含めることが考えられます。これにより、以下のような利点が見込まれます。
【学生側の課題(使用のばらつき・倫理観の違い)に対しては、「振り返り」を通じて生成AIの活用を見える化できる】
生成AIの利用が可能な学習環境では、学生によって使用の仕方や頻度が大きく異なるという課題が生じました。一部の学生は補助的に活用する一方で、他の学生は全体をAIに依存してしまう例もありました。このような状況において、生成AIから得たフィードバックに対する振り返りの内容に着目することで、学生一人ひとりの使用意図・学習態度・内省の深さを推し量ることができます。例えば、ある学生が「ChatGPTにこの文の文法ミスを指摘してもらったが、なぜ”suggesting”ではなく”suggests”にすべきかを再確認した」と振り返れば、文法の理解を深めようとする学習への姿勢が見えます。
【教員側の課題(語彙・文法面の評価の困難さ)に対しては、AI使用前後の変化や思考プロセスを評価軸とすることで、従来とは異なる教育的介入から学習者の言語学習を促すことが可能となる】
AIによって修正された英作文は、表面的には非常に洗練された文になっている場合が多く見受けられます。しかし、それが学習者自身の言語力によるものなのか、AIによる修正の結果なのかが判別しにくく、語彙・文法面のフィードバックが困難になるというのが教員側の課題です。この課題に対して有効と考えられるアプローチが、学習者がAIを使用する前後の文章を比較し、その変化を「どう活用したか」も含めて評価する方法です。「AI使用前の草稿」「AIからのフィードバック内容」「それを踏まえて修正した最終稿」「それに対する学習者の振り返り」をセットで提出させることにより、たとえ最終的な英文が正確で洗練されていても、教員は「もともとの文にどんなエラーがあり、AIをどう活用して修正したか」「その過程で学習者が何を学んだか」を把握することができ、単なる正解・不正解ではなく、学習のプロセスを評価することが可能になります。これにより、学習者は現在の能力と理想的な能力との間に存在する、いわゆる「ギャップ」に気づく機会が増え、学習が促進されることが期待されます。
このように、「生成AIによる事後的なフィードバックの活用+振り返りの評価」を軸とすることで、学生と教員の双方にとって実践可能な「共存」のかたちが見えてくるのではないかと感じている次第です。
□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 支部研究大会・支部総会情報
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□ 関東支部
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■ LET関東支部第153回(2025年秋季)研究大会
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日程:2026年2月14日(土) 9:30~17:00(予定)
場所:関東学院大学 横浜・関内キャンパス
https://univ.kanto-gakuin.ac.jp/evolution/
内容:研究発表・実践報告、基調講演・シンポジウム等
只今、口頭発表の申し込みを受け付け中です。
受付期間:11/1(土)00:00~12/7(日)23:59
※申し込みの詳細は、LET関東支部HP「研究大会情報」をご覧ください。
※その他、本大会に関する情報は、支部HPで随時更新予定です。
LET関東支部HP「研究大会情報」
https://www.j-let.org/kanto/category/convention/
お問い合わせ先:
LET関東支部事務局 kanto-office@j-let.org
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■ LET関東支部新刊紹介コーナーのご案内
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
LET関東支部では、関東支部の会員どうしが最新の書籍の紹介し合える「新刊紹介コーナー」を開始いたしました。本コーナーは過去1年以内の書籍の紹介を対象としており、LET関東支部の会員が著者・編者の書籍に限らず、あらゆる書籍を対象としております。
最初の原稿『私の航跡 メディアと教育のあいだ』が公開されましたので、ぜひご覧ください。
新刊紹介コーナー
https://www.j-let.org/kanto/apply/
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■ 支部研究部会情報
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□ 関西支部
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■ 中高授業研究部会 12月例会
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日時:12月7日(日)15:00-16:30 Zoomによるオンライン開催
内容:
「概念形成における内包と外延」西本有逸(京都教育大学)
「教科書を用いた思考する教室づくり:概念型指導で育てる学習方略と主体性」
溝畑保之(桃山学院大学)
参加費:無料
要予約:下記問合せ先へ前日までにメールによる
問合せ先:京都教育大学 西本有逸(yuitsu@kyokyo-u.ac.jp)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 早期英語教育研究部会 2025年度 第4回例会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
日時: 2025年12月13日(土)13:00~17:00
場所:
1) 大阪市公立大学文化交流センター小セミナー室 (大阪駅前第2ビル6階)
https://www.omu.ac.jp/bunkakouryu-center/
2) ZOOM(ZOOM参加のURLはメールにてお知らせ致します)
※初めての方は、下記の問合せ先までご一報ください。
内容:早期英語教育に関する概論書の輪読および発表
1.文献輪読
Research Methods for Understanding Child Second Language Development (2023)
□ Chapter 5 Verbal Reports as a Window for Understanding Mental Processes among Young Learners (Yuko Goto Butler)
担当:松延亜紀先生(関西学院大学)
□ Chapter 6 Research Methods for Evaluating Second Language Speech Production (Becky H. Huang and Rica Ramirez)
担当:鳥羽素子先生(岡山県立大学)
2. ミニ講義 「役立つ脳教室」
担当:井狩幸男先生 (大阪公立大学)
お問合せ
事務局 竹田里香
eeesiglet@gmail.com
□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 研究員・研究者・教員公募
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JREC-IN の公募情報を「外国語教育」で検索した結果です。
https://goo.gl/fvDGx6
□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 編集後記
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12月10日(水)の午前中(だけ)、広島修道大学に出張してみませんか。
(広報準備中につき、来週中には開始予定...)
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□ LET blog(旧メルマガ)のバックナンバーは、LET blog・アーカイブで閲覧できます。
http://j-let.org/~wordpress/index.php?catid=22&blogid=1
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LET blog 委員会
【関東支部】
若有 保彦(秋田大学)
森谷 祥子(フリーランス)
【中部支部】
伊藤 佳貴(大同大学大同高等学校)
吉川 りさ(横浜国立大学)
【関西支部】
神谷 健一(大阪工業大学)
今尾 康裕(大阪大学)
【九州・沖縄支部】
麻生 雄治(大分大学)
津田 晶子(中村学園大学)
【LET blog 編集責任者】
阪上 辰也 (広島修道大学)
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みなさん、こんにちは。
寒暖差の激しい日が続いておりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
今月号の支部企画は、中部支部からの「初中級英語学習者の英作文執筆における生成AIの使用実態:共存に向けた課題と解決策」です。
それでは、今月号の blog をどうぞご覧ください。
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■ 第250号のもくじ
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■ 第64回 (2025) 年次研究大会
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■ 支部企画
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■ 支部研究大会・支部総会情報
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□ 関東支部
■ LET関東支部第153回(2025年秋季)研究大会
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■ 支部研究部会情報
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□ 関西支部
■ 中高授業研究部会 12月例会
■ 早期英語教育研究部会 2025年度 第4回例会
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■ 研究員・研究者・教員公募
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■ 編集後記
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【LET blog 第250号】(続き)
http://j-let.org/~wordpress/index.php?itemid=1846#more
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【LET blog 第250号】
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■ 第64回 (2025) 年次研究大会
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2025年度 外国語メディア学会(LET64)は、下記の日程で開催します。
(改めて、例年とは開催時期が異なりますのでご注意ください。)
現在、参加申込を受け付けております。ぜひ奮ってご参加くださいませ。
日時・会場:
2025年11月22日(土)・23日(日)
関西大学千里山キャンパス100周年記念会館
大会テーマ:
言語教育とテクノロジーの新しい波を乗りこなす
(Surfing the New Big Wave in Language Education and Technology)
公式サイト:
https://www.j-let.org/let2025/
大会の告知にご協力のほど、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
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■ 支部企画
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□ 中部支部:「初中級英語学習者の英作文執筆における生成AIの使用実態:共存に向けた課題と解決策」
(三上 綾介,愛知学院大学)
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2022年末に公開されたChatGPTは、世界中のさまざまな分野に大きな変革をもたらしました。生成AIは、入力内容(プロンプト)によって出力が大きく異なるため、「プロンプトエンジニア」と呼ばれる職業が登場するなど、使いこなすスキルが新たな専門性として注目されています。実際、一般企業においても、新入社員に求めるスキルの一つとして「生成AIの活用能力」を挙げる例が増えてきているようです。英語教育も例外ではなく、教育における一種のパラダイムシフトが起きたと言っても過言ではありません。言語指導における生成AIの活用法を探る研究や、近年では学習者の情緒面への影響を調査する研究も見られるようになってきました。こうした流れの中で、教員が学習者による生成AIの使用を一律に制限するのではなく、むしろその活用法を正しく教授し、学習に効果的に取り入れる支援を行うことの重要性が高まっています。本稿では、筆者が2024年4月から2025年7月にかけて担当した初中級英語学習者による英作文執筆の授業において、生成AIがどのように使用されていたのか、その実態を報告するとともに、教育現場での共存に向けた課題とその解決策について考察してみたいと思います。
授業は2回で1セットの構成で進めました。2024年度は1年で12セット、2025年度は半年で6セットの授業を実施しました。各セットでは「議論」や「説明」など、特定のテーマに基づいた英作文の執筆を行いました。前半回では、それぞれのテーマに応じて必要な語彙・文法といった表現や構成の工夫、英語での論理展開の方法などを学ぶ時間とし、英作文に必要な準備時間としました。後半回では、実際の英作文執筆を中心に活動を進めました。まず20〜30分程度のプランニングの時間を設け、どのような内容を書くかを整理した上で、さらに20〜30分ほどかけて実際に英作文を執筆しました。今回の授業では、生成AIとの「共存」の可能性を探るために、可能な限り自由な使用実態を把握したいという意図がありました。そのため、AI使用に関しては以下のような最低限のルールのみを設けました。
1. 言いたい単語や文法が分からない場合に、対応する英語表現を断片的に調べることは可とする
2. 1文まるごとを翻訳させるような使い方は禁止する
まず学生側の課題として明らかになったのは、生成AIの使用に対する倫理観や姿勢のばらつきです。ほとんど、あるいは全く生成AIを使用せずに英作文を執筆していた学生も見受けられた一方で、多くの文を生成AIに依存して執筆していたと見られる学生も見受けられました。後者の例としては、1文に数十語を含み、関係詞や分詞構文を多用した非常に複雑性の高い英作文を提出する学生も見られました。次に教員側の課題として、特に評価の難しさが挙げられます。生成AIを用いて書かれた英作文は、語彙や文法のエラーがあらかじめ修正されているケースが多く、学習者の実力を正確に把握することが困難になります。もちろん、英作文の評価は言語面だけでなく、構成の論理性や内容の適切さ(主張と支持文の整合性など)といった側面にも焦点を当てる必要があります。しかし、語彙や文法面に対する具体的なフィードバックが難しくなることにより、従来の教育的介入の在り方を見直す必要が出てきました。
こうした課題を踏まえ、生成AIと英語教育がどのように「共存」できるかについて、実践的な解決策を考えてみたいと思います。今回の授業では、使用実態の把握と試行的な意味も込めて、英作文の執筆中(いわゆるオンラインでの執筆プロセス)における生成AIの使用を許可しました。しかし、使用の程度や方法にばらつきが見られたことから、執筆プロセスにおけるAI利用の制御や評価は依然として難しいという課題が残りました。そこで一つの有効な方策として、執筆中の使用自体は制限し、代わりに「執筆後」に生成AIを用いて自己の文章に対するフィードバックを得る形へとシフトすることが考えられます。その上で、学習者自身がAIから得たフィードバックに対してどのような気づきを得たか、何を修正し、なぜそのように判断したかといった振り返りを重視し、評価の対象に含めることが考えられます。これにより、以下のような利点が見込まれます。
【学生側の課題(使用のばらつき・倫理観の違い)に対しては、「振り返り」を通じて生成AIの活用を見える化できる】
生成AIの利用が可能な学習環境では、学生によって使用の仕方や頻度が大きく異なるという課題が生じました。一部の学生は補助的に活用する一方で、他の学生は全体をAIに依存してしまう例もありました。このような状況において、生成AIから得たフィードバックに対する振り返りの内容に着目することで、学生一人ひとりの使用意図・学習態度・内省の深さを推し量ることができます。例えば、ある学生が「ChatGPTにこの文の文法ミスを指摘してもらったが、なぜ”suggesting”ではなく”suggests”にすべきかを再確認した」と振り返れば、文法の理解を深めようとする学習への姿勢が見えます。
【教員側の課題(語彙・文法面の評価の困難さ)に対しては、AI使用前後の変化や思考プロセスを評価軸とすることで、従来とは異なる教育的介入から学習者の言語学習を促すことが可能となる】
AIによって修正された英作文は、表面的には非常に洗練された文になっている場合が多く見受けられます。しかし、それが学習者自身の言語力によるものなのか、AIによる修正の結果なのかが判別しにくく、語彙・文法面のフィードバックが困難になるというのが教員側の課題です。この課題に対して有効と考えられるアプローチが、学習者がAIを使用する前後の文章を比較し、その変化を「どう活用したか」も含めて評価する方法です。「AI使用前の草稿」「AIからのフィードバック内容」「それを踏まえて修正した最終稿」「それに対する学習者の振り返り」をセットで提出させることにより、たとえ最終的な英文が正確で洗練されていても、教員は「もともとの文にどんなエラーがあり、AIをどう活用して修正したか」「その過程で学習者が何を学んだか」を把握することができ、単なる正解・不正解ではなく、学習のプロセスを評価することが可能になります。これにより、学習者は現在の能力と理想的な能力との間に存在する、いわゆる「ギャップ」に気づく機会が増え、学習が促進されることが期待されます。
このように、「生成AIによる事後的なフィードバックの活用+振り返りの評価」を軸とすることで、学生と教員の双方にとって実践可能な「共存」のかたちが見えてくるのではないかと感じている次第です。
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■ 支部研究大会・支部総会情報
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□ 関東支部
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■ LET関東支部第153回(2025年秋季)研究大会
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日程:2026年2月14日(土) 9:30~17:00(予定)
場所:関東学院大学 横浜・関内キャンパス
https://univ.kanto-gakuin.ac.jp/evolution/
内容:研究発表・実践報告、基調講演・シンポジウム等
只今、口頭発表の申し込みを受け付け中です。
受付期間:11/1(土)00:00~12/7(日)23:59
※申し込みの詳細は、LET関東支部HP「研究大会情報」をご覧ください。
※その他、本大会に関する情報は、支部HPで随時更新予定です。
LET関東支部HP「研究大会情報」
https://www.j-let.org/kanto/category/convention/
お問い合わせ先:
LET関東支部事務局 kanto-office@j-let.org
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■ LET関東支部新刊紹介コーナーのご案内
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LET関東支部では、関東支部の会員どうしが最新の書籍の紹介し合える「新刊紹介コーナー」を開始いたしました。本コーナーは過去1年以内の書籍の紹介を対象としており、LET関東支部の会員が著者・編者の書籍に限らず、あらゆる書籍を対象としております。
最初の原稿『私の航跡 メディアと教育のあいだ』が公開されましたので、ぜひご覧ください。
新刊紹介コーナー
https://www.j-let.org/kanto/apply/
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■ 支部研究部会情報
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□ 関西支部
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■ 中高授業研究部会 12月例会
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日時:12月7日(日)15:00-16:30 Zoomによるオンライン開催
内容:
「概念形成における内包と外延」西本有逸(京都教育大学)
「教科書を用いた思考する教室づくり:概念型指導で育てる学習方略と主体性」
溝畑保之(桃山学院大学)
参加費:無料
要予約:下記問合せ先へ前日までにメールによる
問合せ先:京都教育大学 西本有逸(yuitsu@kyokyo-u.ac.jp)
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■ 早期英語教育研究部会 2025年度 第4回例会
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日時: 2025年12月13日(土)13:00~17:00
場所:
1) 大阪市公立大学文化交流センター小セミナー室 (大阪駅前第2ビル6階)
https://www.omu.ac.jp/bunkakouryu-center/
2) ZOOM(ZOOM参加のURLはメールにてお知らせ致します)
※初めての方は、下記の問合せ先までご一報ください。
内容:早期英語教育に関する概論書の輪読および発表
1.文献輪読
Research Methods for Understanding Child Second Language Development (2023)
□ Chapter 5 Verbal Reports as a Window for Understanding Mental Processes among Young Learners (Yuko Goto Butler)
担当:松延亜紀先生(関西学院大学)
□ Chapter 6 Research Methods for Evaluating Second Language Speech Production (Becky H. Huang and Rica Ramirez)
担当:鳥羽素子先生(岡山県立大学)
2. ミニ講義 「役立つ脳教室」
担当:井狩幸男先生 (大阪公立大学)
お問合せ
事務局 竹田里香
eeesiglet@gmail.com
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■ 研究員・研究者・教員公募
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JREC-IN の公募情報を「外国語教育」で検索した結果です。
https://goo.gl/fvDGx6
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■ 編集後記
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12月10日(水)の午前中(だけ)、広島修道大学に出張してみませんか。
(広報準備中につき、来週中には開始予定...)
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【関東支部】
若有 保彦(秋田大学)
森谷 祥子(フリーランス)
【中部支部】
伊藤 佳貴(大同大学大同高等学校)
吉川 りさ(横浜国立大学)
【関西支部】
神谷 健一(大阪工業大学)
今尾 康裕(大阪大学)
【九州・沖縄支部】
麻生 雄治(大分大学)
津田 晶子(中村学園大学)
【LET blog 編集責任者】
阪上 辰也 (広島修道大学)










