No. 37 支部企画:九州・沖縄支部 (2010年12月10日)
□■===================
★支部企画コーナー No. 37 九州・沖縄支部
===================□■
===================
☆ 秋季学術講演会報告
鈴木千鶴子 (長崎純心大学)
===================
今年度の秋季学術講演会は,JACET九州沖縄支部との共催で,11月13日西南学院大学
大学院大ホールで開催された。演題は”Connecting multi-word units, English language
classrooms, and the Academic Word List”,講師はDr. Averil Coxhead (Senior
Lecturer, School of Linguistics and applied language studies, humanities and social sciences, Victoria University of Wellington, New Zealand)。
語彙という普遍的なテーマと,久し振りのネーティブ・スピーカーの講演で,時間帯がJACETの役員会後という好条件も重なり,出席者は40名あまりと盛況であった。講演後に25名ほどで催された懇親会で島谷浩支部長が表された通り”energetic”なプレゼンテーションで,その後を受けての質疑応答も活発であった。講師の Coxheadは,閉会後も数名の参加者から種々の交流を得,九州沖縄地域の学会員の意識の高さを評価し感謝していた。
講演は,ニュージーランドの名峰タラナキ(英名:Egmont)の富士山にも似た美しい
写真と,それにまつわる原住民マオリに伝わる神話で始まり,話題は全てmountainsに
関することである,との言葉に一瞬耳と目を疑ったが,語彙という膨大な征服すべき高
い目標のイメージとの合致に納得し,終わるころには登山を楽しむ意欲・勇気とゆとり
が生まれた。そう思わせる根拠は,膨大な語彙を含むテキストデータもコーパスとして
分析することにより,相当なスピードで電子的に処理されうること,それによって到底
攻略不可能と思われる複雑な語彙を巡る諸相が明らかになりうることが,示されたこと
にあろう。例えば,Coxhead自身が師匠Paul Nationと共に開発し,博士論文の一環と
して2000年に発表したAcademic Word List (AWL)。この,彼女を30歳台にして一躍学
界の寵児としたAWL自体も,その代表的な成果に他ならない。
講演では,(1)AWLについて(2)multi-word unitsとAWL(3)それらの授業での
活かし方,について早口ながら分かりやすく語られた。参加者の語彙サイズを瞬時に測
定してのコントロールの見事さは,翌週に長崎で大学生(同じく40名程度)を対象に
講じた「語彙学習の方法」”Keeping Vocabulary in Mind” での場合と照合しても達人技と
言える。結局「語彙(研究)を征する者は,最良の語学教師に成り得る」の生きた証か
もしれない。(1)では,①word listsの必要性②AWLとは何を目指し,どのように作
成されたか。(2)では,①collocation dataを見る2つの視点②特にacademic textsに
おける複数語連鎖の特性,更にPhraseology研究への発展性。(3)では,①教育場面
の複雑性への理解②可能な活動の例示③word lists使用の教師の心得,が盛り込まれ,
これ以上なく充実した内容であった。
結論として, CoxheadはTom Cobbを引用し「学習者はword listsが好きである,ならば
優れたリストを与えよう」,その為のコーパス研究であり,その方法は焦点を定めて適
正なデータで妥当にして有益な結果を導くべき。且つ教師としては,生のデータや研究
の成果を学習者に軽率に直接提示すべきではなく,あくまでもword listsは学習者に
語彙・文法・意味情報に注視したreadingを可能にするツールであり,またwritingにお
いてそれらの単語を用いる知識と能力の発達を助長する仕掛けを提供しなければならない。
最終目標は,学習者自身が状況に応じた重要な単語を見逃がさず,必要に応じて使いこなせるようにすることである,と締めくくられた。我々もAverilとともに更なる頂を目指
して登り続けるであろう - - - 講演最後の引用 “Never measure the height of a mountain until you have reached the top. Then you will see how low it was.” by Dag HammarskjoldをKeeping in Mindし。
★支部企画コーナー No. 37 九州・沖縄支部
===================□■
===================
☆ 秋季学術講演会報告
鈴木千鶴子 (長崎純心大学)
===================
今年度の秋季学術講演会は,JACET九州沖縄支部との共催で,11月13日西南学院大学
大学院大ホールで開催された。演題は”Connecting multi-word units, English language
classrooms, and the Academic Word List”,講師はDr. Averil Coxhead (Senior
Lecturer, School of Linguistics and applied language studies, humanities and social sciences, Victoria University of Wellington, New Zealand)。
語彙という普遍的なテーマと,久し振りのネーティブ・スピーカーの講演で,時間帯がJACETの役員会後という好条件も重なり,出席者は40名あまりと盛況であった。講演後に25名ほどで催された懇親会で島谷浩支部長が表された通り”energetic”なプレゼンテーションで,その後を受けての質疑応答も活発であった。講師の Coxheadは,閉会後も数名の参加者から種々の交流を得,九州沖縄地域の学会員の意識の高さを評価し感謝していた。
講演は,ニュージーランドの名峰タラナキ(英名:Egmont)の富士山にも似た美しい
写真と,それにまつわる原住民マオリに伝わる神話で始まり,話題は全てmountainsに
関することである,との言葉に一瞬耳と目を疑ったが,語彙という膨大な征服すべき高
い目標のイメージとの合致に納得し,終わるころには登山を楽しむ意欲・勇気とゆとり
が生まれた。そう思わせる根拠は,膨大な語彙を含むテキストデータもコーパスとして
分析することにより,相当なスピードで電子的に処理されうること,それによって到底
攻略不可能と思われる複雑な語彙を巡る諸相が明らかになりうることが,示されたこと
にあろう。例えば,Coxhead自身が師匠Paul Nationと共に開発し,博士論文の一環と
して2000年に発表したAcademic Word List (AWL)。この,彼女を30歳台にして一躍学
界の寵児としたAWL自体も,その代表的な成果に他ならない。
講演では,(1)AWLについて(2)multi-word unitsとAWL(3)それらの授業での
活かし方,について早口ながら分かりやすく語られた。参加者の語彙サイズを瞬時に測
定してのコントロールの見事さは,翌週に長崎で大学生(同じく40名程度)を対象に
講じた「語彙学習の方法」”Keeping Vocabulary in Mind” での場合と照合しても達人技と
言える。結局「語彙(研究)を征する者は,最良の語学教師に成り得る」の生きた証か
もしれない。(1)では,①word listsの必要性②AWLとは何を目指し,どのように作
成されたか。(2)では,①collocation dataを見る2つの視点②特にacademic textsに
おける複数語連鎖の特性,更にPhraseology研究への発展性。(3)では,①教育場面
の複雑性への理解②可能な活動の例示③word lists使用の教師の心得,が盛り込まれ,
これ以上なく充実した内容であった。
結論として, CoxheadはTom Cobbを引用し「学習者はword listsが好きである,ならば
優れたリストを与えよう」,その為のコーパス研究であり,その方法は焦点を定めて適
正なデータで妥当にして有益な結果を導くべき。且つ教師としては,生のデータや研究
の成果を学習者に軽率に直接提示すべきではなく,あくまでもword listsは学習者に
語彙・文法・意味情報に注視したreadingを可能にするツールであり,またwritingにお
いてそれらの単語を用いる知識と能力の発達を助長する仕掛けを提供しなければならない。
最終目標は,学習者自身が状況に応じた重要な単語を見逃がさず,必要に応じて使いこなせるようにすることである,と締めくくられた。我々もAverilとともに更なる頂を目指
して登り続けるであろう - - - 講演最後の引用 “Never measure the height of a mountain until you have reached the top. Then you will see how low it was.” by Dag HammarskjoldをKeeping in Mindし。