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No. 13 椎名 紀久子(関東支部) (2006年01月10日)

カテゴリー: General
千葉大学国際教育開発センターの椎名紀久子です。「暖かい頃から負担をかけて
根を増やし茎を太くしておくと寒い冬には立派な野菜ができる」といった大八木
廣人先生の「何事も基礎・基本が大事」で始まった「リレートーク」も本号が13
号となり、一周年記念新年号とのことでちょっと緊張しています。

2006年の日経産業新聞元旦号は第一面に、「今年はデジタリアンが活躍する年?」
と題した記事を載せています。デジタリアンとはブログやポッドキャスティング
などの新技術を使いこなす人たちで、なかでもインターネットで音声コンテンツ
を配信するポッドキャスティング(iPodとブロードキャスティングを組み合わせ
た造語)では語学番組の人気が高いそうです。この記事で興味深かったのは、デ
ジタリアンの必須条件は「決して新技術に振り回されないこと」で、「本来の目
的を忘れずに」新技術を自分にあったかたちで創造的・効率的に活用するのが達
人の技だというのです。

一年間のリレートークを読み直すと、LETの先生方は新技術の有効性を認めつつ
も、それが外国語学習の目的や基礎・基本と遊離しないように、「学習者の学び」
を念頭に置いたうえで教育機器やITの有効活用について日々研鑽を積み、確実に
達人への道を歩んでおられるように思いました。例えば、PCによるバーチャルリ
アリティで子どもの想像力の芽や実体験への意欲を摘まないようにするには?、
いつでも学習できるeラーニングが学習の先延ばしにつながらないようにするに
は?、専門化・高機能化する教育メディアや学習システムをユーザーフレンドリー
にするようには?などなど様々な課題に取り組んでおられます。独自に立ち上げ
たWeb英語学習システムのサーバー管理者としてセキュリティ対策と使い勝手の
はざまで奮闘しておられる先生、PCにできることすべてをすることが最高の学習
システムではないと指摘する先生、学習者とCALLの特性分析といった原点に立ち
返ってカリキュラムの再編成をした先生、メディアと学習者同士の相互作用を組
み合わせた「学びの場の演出」に心を砕いておられる先生もおられ、頭の下がる
思いです。LETは2006年も元気一杯で進むだろうと、益々期待を高めています。

わたしは大学で「CALL英語」のほかに、プレゼンテーション能力養成用の対面式
少人数クラスの「中級、上級英語」、カナダ・アルバータ大学で語学文化研修を
行なう「海外研修英語」や「言語教育方法論」などの科目を担当していますが、
「個別・レベル別・興味別指導」が得意なCALLやITの活用と、「対面による臨機
応変な指導」が得意な人間教師をどう有機的に組み合わせていくか、そして学習
者が学んだことばを「生きたことばとして実体験」できる場をいかに多く提供し
ていくかについて模索中です。本年も皆様のお知恵を借りながら勉強していきた
いと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

次回のリレートーク担当者は龍谷大学の李洙任(Lee Soo Im)先生です。李先生
のゼミ生と韓国の学生との間でオンラインコミュニケーションを図り、日韓交流
を市民レベルで促進しておられます。日韓の緊張した関係がIT活用による草の根
運動で緩和されつつあることを報告していただきます。ご期待ください。

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