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No. 38 支部企画:関東支部 (2011年01月10日)

カテゴリー: General
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★支部企画コーナー No. 38 関東支部
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☆ 公立小中学校からの声~「外国語活動」開始にあたって~
横山 桂子 (長野県塩尻市立広陵中学校・清泉女学院大学 研修員)
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メルマガ担当の先生から、「現在の小学校、中学校の英語教育の現場の声」というお題をいただきました。本年度、長野県教育委員会より「長期研修生派遣」が認められ、清泉女学院大学渡邉時夫先生のもとで「外国語活動」をテーマに教育現場での疑問を踏まえて学んでいます。多くの方がご存じのように、もう数カ月後の4月からはどの公立小学校でも5・6年生に週1コマ(年間35単位時間)「外国語活動」が実施されます。文部科学省の報告(1)によると約98%の公立小学校で先行実施されているという状況から、公立中学校には何らかの形で英語を学んだ生徒が入学してきている(してくる)ことになります。「小中の接続や連携が必要だ」という声が上がってきています。メルマガでは、私が研修で学んだ長野県教育現場の現状(一部ではありますが)を中心にお話したいと思います。紙面の関係上、今回は、指導者についてです。

誰が教えるの?

小学校学習指導要領には、指導体制の充実として「指導計画の作成や授業の実施については、学級担任の教師または外国語活動を担当する教師が行うこととし、授業の実施にたっては、ネイティブ・スピーカーの活用に努めるとともに、地域の実態に応じて、外国語に堪能な地域の人々の協力を得る」と明記されています。そのため、市町村教育委員会ごとに指導者が異なっています。例えば、A市では、学級担任が一人で。B市では、担任と小学校専属のALT(外国語指導助手)と毎時間team-teachingで。C市では、学級担任とALTと英語が堪能な指導者(多くの場合は日本人で講師として採用されている)と3名で。D市では、年間35時間中33時間は担任が、残りの2時間(年に1回から2回)はALTがone-shotで訪問しゲームなどを、または、年間指導時間の半分くらいは中学校の英語教員が来たり、中学校のALTが来たりして教えてもらい、残りは担任が。というように様々です。C市のように指導者をきちんと配置した小学校では、45分間の授業のほとんどが英語で進められています。対照的に、私が参観したA市のある小学校では学級担任が一人で授業を担当しなくてはならず、「中学校の前倒し」と思われかねないような授業をされていました。つまり、基本文(買い物で使う表現May I help you ?など)を暗記させて、その限られた同じ表現を一時間中児童が使って活動(買い物ごっこ)をする、というようなMim-Mem に近い授業でした。しかし、A市のその先生は『小学校学習指導要領解説外国語編』の次の部分は読んで知っておられました--- 「中学校段階の文法等を単に前倒しするのではなく,(略)パターン・プラクティス(表現習得のために繰り返し行う口頭練習)やダイアローグ(対話)の暗唱など,音声や基本的な表現の習得に偏重して指導したり,(略)スキル向上のみを目標とした指導が行われたりすることは,本来の外国語活動の目標とは合致しない。では、どうしてそのような授業になってしまうのでしょうか。小学校の先生方にインタビューをしてみると以下のような声が返ってきます。自分がかつて英語の指導を中学校から大学において受けた「今日の文型」のdrill を中心とした指導だったら自分にもできるかもしれない、と思っていました。ところが、「外国語活動」のに研修会に出たところ、小学校での指導は、そのような内容ではいけない、と言われ、どのように行っていけばいいのか本当に不安になりました。教科書も何も無い条件のもとで、英語の力が全く無い私がどのように英語を教えたら良いのか、途方にくれています。メルマガをお読みの多くのみなさんのご専門は英語ではないかと想像していますが、ある日突然「自分の専門外を指導しなさい。でも教えるにあたり条件整備はまだ整っていませんが」と言われたらどうなさいますか。小学校の先生方は、今まさにそこでご苦労されているのです。小学校は中学校に比べて部活動の指導がなく、生徒指導も中学校ほど毎日厳しいものではない、だからきっと児童の下校後は教材準備の時間があるのではと私も思っていました。しかし小学校へ訪問し児童に授業を行うという私のささやかな体験でわかったことですが、小学校の先生方も中学校教員と同じように多忙です。「外国語活動」が新しく教育課程に組み込まれたものの、やらなくてはいけないことは次から次へとあります。音楽会、運動会、学年の行事(修学旅行やキャンプなど)、児童会、総合的な学習の時間で行っている調査活動やその準備、などなど。一つ終わってもまた一つと正直なところ打ち合わせの時間の確保にさえ苦労するところです。そこへ英語の指導が加わり、『英語ノート』が配布されても・・・といったところでしょうか。また、ALTの活用に関しても、いくつかの問題があるように思います。先日私は、JETプログラムのMid-Year Conferenceでプレゼンをさせていただきました。ほとんどのALTから「外国語活動」指導の問題点の一つとして小学校学級担任との打ち合わせが非常に困難である、との指摘がありました(fax、メール、電話を通じての打ち合わせになってしまうので英語力の問題、訪問回数の問題、指導内容が明確ではない等)。また、ALTの雇用(2)に関しても教員が打ち合わせや指示をすると偽装請負になってしまう、というような契約がありますが、現場からみるとかなり問題があると思われます。渡邉他(2010)(3)は「自治体の財政事情により、教育の質に差が生まれ、教育の機会均等の原則が侵されるような事態は避けなければなりません」と条件整備が欠かせないことを述べています。それがない限り、教育現場ではにこやかに「外国語指導」を進めることは非常に難しいと思います。ですので、現場の教員の一人として条件整備の必要性を機会があることに発信したいと考えています。

(1) 文部科学省(2009)『平成21年度公立小・中学校における教育課程の編成・実施状況調査(A票)の結果について(速報)』2010年11月5日検索
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/__icsFiles/afieldfile/2009/06/11/1269841.pdf

(2) 朝日新聞 「英語助手と先生、授業協力したら違法 契約巡り現場混乱」
http://www.asahi.com/national/update/0803/OSK201008030141.html
2010年11月28日検索

(3) 渡邉時夫・佐藤令子・粕谷恭子(2010)『ここから始めよう 小学校英語 楽しい指導の第1歩』明治大学出版

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