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No. 19 支部企画:関東支部 (2009年05月10日)

カテゴリー: General
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★支部企画コーナー No. 19 関東支部
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英国の外国語教育-Oxford 便りに代えて-

森田 彰 (早稲田大学)

イギリスは、大陸のヨーロッパと様々な点で違ったところがあります。島国であり、地理的に孤立しているだけではなく、文化の重要な要素である宗教も英国国教会が主流(国教)であり、経済の根幹である貨幣、度量衡は、パウンド(なぜ日本ではポンドと言い続けるのでしょう?)、マイルです。さらに、文化そのものとも言える言語も、英語は他のヨーロッパ諸言語と比べてみると(これも日本ではあまり意識されていないようですが)、ほとんど孤立言語 isolatedlanguage と言ってよいものです。そうした事情から、英語発祥の地であり、英語圏であるイギリスの言語教育事情は、日本とよく似た面を多く抱えています。その中でも重要な点は、

① 一つの言語が、国内で圧倒的に優勢な立場にある。
② 伝統的に、大陸、あるいは国外の高い文化の影響下にある。
③ 自国の文化程度が高く、高度な概念をほとんど「母語」の中で表現できる。
④ 識字率が高く、教育制度も整っている。


などが挙げられます。従って、日英両国において、その国の人々が学ぶ価値のある母語以外の言語は、結果として「外国語」にならざるを得ず、かつ教育するほどの価値のある外国語は、当然広く行き亘った学校制度の中で、「万人に」教えられるものとなります。

私は、1年間の研究休暇を得て、このようなイギリスに住まうことになりました。前半は、Oxford 大学 Hertford Collegeに SCR の Associate Member として所属し、Department ofEducationに顔を出せることになりました。Department では、ちょうどこの3月末にFirst andSecond Languages: Exploring the Relationship in Pedagogy-related Contexts というconferenceがあり、LET関西支部の竹内 理教授のグループが、学習方略使用時の脳内活動について発表されていました。私は、仕事の都合で、参加できませんでしたが、ちょうど昨日(4月27日)には、同学部のProf. Ernesto Macaro の主催で、Prof. Ros Mitchell (Universityof Southampton) の "Foreign languages in English primary schools: evolving policyand practice" と言う発表(セミナー:写真)がありました。表題からもお分かりのように、イギリスの小学校での外国語教育について、その歴史的経緯と分析、現状報告が行われました。実のところ、外国語と言っても、それはフランス語を指し、また結論から言っても、かなりの苦戦を強いられているようでした。

イギリスでは secondary school になると、一般校でもスペイン語など、教えられる言語の数が増えはしますが、先ほども述べたように、イギリスと日本の「外国語教育」には似通った点が多くあります。日本における英語教育を考えて行く時には、アメリカを中心とする第二言語習得に関する研究、近隣アジアの外国語教育の研究とともに、英語国イギリスにおける外国語教育に付いての研究もやはり重要で、そこから得られるものも多いのではないか、テムズ川(Oxfordでは the Isis と呼びます)を望むパブで地元のエイルをちびちびとやりながら、そうしたことを考えていました。9月からは、場所をケム川の畔、Cambridgeに移し、また何かご報告ができれば、と思っています。
写真1 Prof. Macaro (左)と発表者
http://www.j-let.org/~mm/200905/1.jpg

写真2 Department の中庭から
http://www.j-let.org/~mm/200905/2.jpg

写真3 試験が終わり、喜ぶオックスフォード大生
http://www.j-let.org/~mm/200905/3.jpg

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